モーラムという「言葉」は頻繁に聞く事ができても、モーラムという「音楽」を聴くことは難しくなっている、昨今のタイ音楽事情。
モーラム楽団のコンサートに行っても、歌われているのはほとんどがルークトゥンであったりポップスであったりするというのが実情です。
理由は単純で、その方が客にウケるからなんですが・・・。それと、モーラムは鍛錬が必要なので、歌える人が限られているというのもあります。でも、それではモーラムが好きな人間としては、それではちょっと寂しい。
そんな不満を少し解消してくれたのが、3月に観たタッサポーン・トーンヂャンのコンサートでした。
昨年(2016年)10月13日以降、それまで一緒に行動していたゴン・フアイライとは別々に活動するようになり(事務所は同じなので、仲違いした訳ではありません)、歌う場がすっかり少なくなってしまっていたタッサポーン。
コンサートが行われた3月20日は、自分としては翌日からイサーン~ラオスへ行かなければならなかったので、どこにも行きたくなかったのですが、彼女の単独コンサートを観るのは1年ぶりという事もありましたので、無理やり調整しました。
しかも場所がラヨーン。この地域は経験上、行けても帰りのタクシーなどがない場所であることは充分知っていたのでかなり躊躇しましたが、帰りはタッサポーンに送ってもらえるようお願いして、ラヨーンへと向かいました。
◆タッサポーンと当日ゲストだった同じ事務所Sound Me Heangの後輩歌手、モス・ラッサミー(左)。
1月にラヨーンに行った際に利用した、バンナーのロットゥー乗り場が警察により移転させられて、行くのにもすったもんだしてしまいましたが、何とかタッサポーン達がステージに上がる直前に到着することが出来ました。
1年前オームヤイで彼女のコンサートを観た時はバックはカラオケでしたが、今回はバックバンドを引き連れてのステージ。それだけでも期待が高まります。
あまりに久しぶりなので、どんなプログラムを組んでいるのか皆目見当が付きませんでしたが、冒頭のタッサポーンの一節に、それまでの苦労と次の日からの事は一気に吹き飛びましたね。
それが1本目の動画なんですが、これこそモーラム歌手タッサポーン・トーンヂャンの真の実力と思わせられる、見事な歌、そしてラムでした。
こういうのはなかなか、カラオケをバックにしたコンサートでは聴く事ができませんからね。
◆タッサポーン・トーンヂャン/ラムプルーン・ワーンヂャオポー・パラーンチャイ@ラヨーン-1(2017年3月20日)
間髪入れず、自身のオリジナル曲「キットホート・プーラーン・コン」からのモーラムと、畳み掛けるようなモーラム・メドレー。これを聴く事ができただけでも、ラヨーンまで来た甲斐があったというものです。
◆タッサポーン・トーンヂャン/モーラム・メドレー@ラヨーン-2(2017年3月20日)
ゴンと活動していたときは、ゴンの休憩を兼ねての場つなぎ的役割だったので、モーラムはおろかオリジナルの曲も歌っていなかったタッサポーンでしたが、ようやく自分がメインのステージが出来るという喜びが、コンサートの間溢れ出ていたように思います。
それと、やっぱり彼女が一番歌いたいのは流行曲のカヴァーではなく、師であるカムグン・トーンヂャンから学んだモーラムだと思うんですよね。
ただ、今のタイでそれが出来る場が無いのが残念な所です。
また、この日もう一つの大きな目的だったので、彼女のオリジナル曲「タウェン・ボ・クーイ・トゥア」を聴くことでした。
昨年この曲がリリースされて以降、この歌をステージで聴くタイミングを逸してしまっていたので、この日はなんとしてでもビデオに収めたいと意気込んでいました。
それが達成できただけでも意味があった、今回のラヨーン行きでした。
◆タッサポーン・トーンヂャン/タウェン・ボ・クーイ・トゥア@ラヨーン-3(2017年3月20日)
なお、この日コンサートの合間に新曲が間もなくリリースされることを話していたタッサポーンですが、その曲「ポー・シ・ペン・フェーン・ダイ・ボ」は4月9日にYouTubeで公開されました。
前作とはまた違った、アップテンポの曲になっていて、それまでの曲では聴く事が出来なかったタッサポーンの新たな一面が垣間見れる曲になっています。
ちなみに、アレンジを担当しているのはサワット・サーラカーム先生です。
◆タッサポーン・トーヂャン/ポー・シ・ペン・フェーン・ダイ・ボ
間違いなく実力はあるのに、それを発揮できる場が無いというのは、何とも歯がゆい状態です。
タイでたくさんの歌手のコンサートを観ていると、長いスパンでフォロー出来る歌手は限られてきます。それは趣味や趣向もありますが、自分にとってタッサポーンは長く追いかけて来た数少ない、大切な存在の歌手の1人です。
その彼女が単に人気が出るというだけでなく、真の力が発揮できる場が早く出来る事を願ってやみません。
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