2016年11月30日水曜日

【モーラム万華鏡#5】シラピン・プータイ:圧倒的な完成度で魅せる「モーラムの美」

◆ศิลปินภูไท(シラピン・プータイ)@ギンゲーウ交差点、バンプリー(2016年11月26日)


とにかく圧倒されたステージでした、シラピン・プータイ(より正確な発音に基づく表記をすると「シンラピン・プータイ」となりますが、読みやすい表記にするため簡略化しています)。

実はシラピン・プータイを観るのはこの日が初めてではありませんでした。

彼らのステージを観たのは、2015年5月にモッデーン・ヂラーポンに教えてもらって行ったのが最初でした。

モッデーンのTV出演を見学に行った後、彼女が「モーラムのコンサートを観に行くから、一緒に行く?」と誘ってくれたのがキッカケでした。

その時は入った瞬間、規模の大きさと壮観さにビックリしたのを今でも覚えています。ただ、知識が浅かったのと、モーラム楽団を観る心構えが無かったので、これをどう捉えてよいのか分からない状態だったのは確かです。


◆シラピン・プータイ@パッタウィゴン・マーケット(2015年5月14日)






あれから1年半。自分の意識もだいぶ変わりました。

特に2016年7月に観たプラトム・バントゥンシンのコンサートは、自分の意識をモーラム楽団へと向ける大きなキッカケになりました。

そして、モーラムの観方ももすこしづつ分かってきたような気が、この時期でのトップクラスのモーラム楽団のコンサートは、とにかく衝撃的でした。1年半まえにシラピン・プータイを観た時の印象と今回とでまったく違うのは、彼らが変わったというよりも、自分の意識の変化が大きいと思います。

この日、自分は仕事が休みだったので、普段のコンサートとしては少し早めの19時半過ぎに会場に着いたのですが、既にコンサートは19時から始まっていたようです。

モーラム楽団のコンサートはいきなり本編がスタートする訳ではなく、最初は前座というか歌手の顔見せ的な意味合いで、メンバーがステージに揃ってメドレー形式で歌う所から始まります。

まだステージ前で踊っている人がいない状態でウロウロしていたら、FBでつながっていた楽団員のプローイちゃんから舞台上からいきなり挨拶されてしまいましたw


◆プローイ・シラピンプータイ



顔見せを1時間ほど行った後は、いよいよ本編のスタート!

やはりプミポン国王へ哀悼の意を表する演目から始まりましたが、既にこの時点で、その壮観さにノックアウトされていました。


◆ศิลปินภูไท@แยกกิ่งแก้ว บางพลี-1(26 พ.ย. 2559)



その後はめくるめく音楽絵巻の展開に、ナチュラルハイ状態。

写真も沢山撮りたいし、動画も残しておきたい。だけど踊りたい、と一人で上を下への大騒ぎでした。










◆ศิลปินภูไท@แยกกิ่งแก้ว บางพลี-2(26 พ.ย. 2559)



◆ศิลปินภูไท@แยกกิ่งแก้ว บางพลี-3(26 พ.ย. 2559)



「シラピン・プータイ」とは、文字通り「山の芸術家」という意味です。

なので、トレードマークを山岳民族の衣装にしていて、要所要所で楽団員がこの衣装を着て登場します。


◆ศิลปินภูไท@แยกกิ่งแก้ว บางพลี-4(26 พ.ย. 2559)


この楽団を率いているのはウィーラポン・ウォンシン(วีระพงษ์ วงศ์ศิลป์)という人です。

彼は総監督としてだけでなく、中盤でステージに登場し、歌も披露してくれました。


◆วีระพงษ์ วงศ์ศิลป์(ウィーラポン・ウォンシン)



◆ศิลปินภูไท@แยกกิ่งแก้ว บางพลี-5(26 พ.ย. 2559)



◆ศิลปินภูไท@แยกกิ่งแก้ว บางพลี-6(26 พ.ย. 2559)


今回、シラピン・プータイを観て思ったのは、ひとりひとりの歌手も個性の際立った人が多いのですが、それだけでなく、彼らの最大の魅力は歌手・ダンサー・バンドそして舞台美術の全体が一丸となって作り上げる芸術的表現にある、という気がしました。

と言っても、決して堅苦しいものではなく、もちろん目の前の観客を楽しませてなんぼのエンタテインメント精神があってのモーラム楽団なので、観て良し踊って良しと様々な楽しみ方が出来るのが、この楽団の大きなアドバンテージでしょう。















◆ศิลปินภูไท@แยกกิ่งแก้ว บางพลี-7(26 พ.ย. 2559)



◆ศิลปินภูไท@แยกกิ่งแก้ว บางพลี-8(26 พ.ย. 2559)



◆ศิลปินภูไท@แยกกิ่งแก้ว บางพลี-9(26 พ.ย. 2559)


コンサートを観ている間、ずっと考えていたのは「シラピン・プータイって、こんなに凄かったっけ?」という事。

1年半前に観た時は、全編を観た訳ではなかったので、今回とは単純に比較できませんが、自分の意識が変わっただけでなく、やはりこの楽団が進化しているのは間違いないと思います。

歌手の粒は揃っていますし、ダンサーのグレードもピカイチ。さらに火や吊りものまで飛び出すという、下手なガイドブックに載っているような見世物なんかより何千倍も楽しめます。

さすがトップクラスのモーラム楽団。

お気に入りの歌手も見つかったし、またバンコクに来てくれた時は、必ず行きます。

2016年11月26日土曜日

【訳詞に挑戦#1】YouTube再生1億回突破記念!ゴン・フアイライ「クー・コーン(運命のふたり)」

◆ก้อง ห้วยไร่@ร้านอีสานลำเพลิน - 25 พ.ย. 2559(ゴン・フアイライ@イサーン・ラムプルーン、2016年11月25日)


先日のアルバムレビューでも触れましたが、ゴン・フアイライの新曲「クー・コーン」が公開2ヶ月という短いスパンで、再生回数1億回を突破しました。

11月26日の時点で既に1億2千万回までに達しており、いまだハイペースで再生回数を伸ばしています。

このペースで行くと、2億回に達するのもそう遠くないかもしれません。

その理由は、このイサーン語で歌われている曲がイサーンの人だけでなく、それ以外の人達からも人気を集めている事にあります。

それはテレビドラマの主題歌であるという事も大きな要因の一つではありますが、前作の「サイ・ワー・シ・ボ・ティム・ガン」の時もそうであったように、ゴンの曲には出身地に関係なく、多くの人の心に訴えかけるものがあるということでしょう。

その点が今人気を二分するブン・パトゥムラートとの大きな違いではないでしょうか(ブンのファンのほとんどはイサーン人)。

と、そんな前置きはさておき、この曲の魅力をさらに知るには、歌詞の内容を理解する事は避けられません。

そんな訳で、相変らずタイ語は上達していないんですが、この曲の訳詞に挑戦してみました。

ただ、直接イサーン語からの訳はさすがに無理なので、今回は標準語に直された歌詞を参考にしながら、訳詞をしました。

なので、間違っている部分も沢山あるかもしれません。

また、前後の歌詞とのつながりから、かなり飛躍してしまっている部分もあると思いますが、この歌が言わんとしている事が伝わればと思い訳しました。

動画は11月25日、イサーンラムプルーンでのライブからの映像です。


◆ก้อง ห้วยไร่(ゴン・フアイライ)/(クー・コーン)@イサーンラムプルーン(2016年11月25日)



คู่คอง(運命のふたり)/ก้อง ห้วยไร
คำว่าฮักเกิดขึ้นที่ใด เกิดกับไผมันบ่สำคัญ
カム・ワー・ハック・グート・クン・ティー・ダイ グート・ガップ・パイ・マン・ボ・サムカン
愛という言葉はどこにでも生まれる 大切に感じていなかった人との間にも

มันจะอยู่ตรงนั้น บ่หายตามกาล..เวลา
マン・ヂャ・ユー・トロン・ナン ボ・ハーイ・ターム・ガーン・・・ウェーラー
それは常に身の回りにあって 決して消え去る事はない

ว่าสิผ่านมาดนปานใด๋ ในหัวใจบ่เคยร้างลา
ワー・シ・パーン・マー・ドン・パーン・ダイ ナイ・フアヂャイ・ボ・クーイ・ラーン・ラー
どんなに長い時間が経とうとも 心の中にはあり続けていた

ยังจดจำทุกถ้อยวาจา ที่เฮาเว้าต่อกัน
ヤン・ヂョット・ヂャム・トゥック・トーイ・ワー・ヂャー ティー・ハオ・ワオ・トー・ガン
2人で交わしたすべての言葉は まだ記憶に残っている

เมื่อสวรรค์แยกกายเฮาสอง จากคู่ครองเป็นคนอื่นไกล
ムア・サワン・イェーク・ガーイ・ハオ・ソーン ヂャーク・クー・クローン・ペン・コン・ウーン・グライ
天が二人を引き裂き 離れ離れになったとしても

เหลือแต่คำสัญญาใช่ไหมที่ยัง..คงอยู่
ルア・テー・カム・サンヤー・チャイ・マイ・ティー・ヤン・・・コン・ユー
約束の言葉だけは残り続けるだろう

แม้นว่าเจ้าสิเกิดเป็นหยัง บ่เคยคิดซัง ย้อนฮักคนฮู้
メーン・ワー・ヂャオ・シ・グート・ペン・ヤン ボ・クーイ・キット・サン ヨーン・ハック・コン・フー
たとえ彼女がどんなものに生まれ変わろうとも 嫌う事はない 今でも愛し続けている

สิเคียงข้างให้ได้ฮู้ หัวใจยังคงเดิม
シ・キアンカーン・ハイ・ダイ・フー フアヂャイ・ヤン・コン・ドゥーム
お互いの絆の証は消え去る事はなく 愛する心はいつまでも変わらない

*  บ่มีอีหยังมาพังทลาย ความฮักเฮาสองลงได้
ボ・ミー・イー・ヤン・マー・パン・タラーイ クワーム・ハック・ハオ・ソーン・ロン・ダイ
2人の愛に形は無くとも 残す事は出来る

แม้นดินสลายยังมั่นคงคือจั่งตอนเริ่ม
メン・ディン・サラーイ・ヤン・マン・コン・クー・ヂャン・トーン・ルーム
たとえこの世がなくなっても 愛が始まった時と同じように

ฮักที่แลกด้วยแหกกฏฟ้า ถึงมีน้ำตาเข้ามาแต่งเติม
ハック・ティー・レーク・ドゥアイ・ヘーク・ゴット・ファー トゥン・ミー・ナムター・カオ・マー・テン・トゥム
運命に逆らって手に入れた愛は やがて涙になるだろう

ความปวดร้าวสิเข้ามาเสริม บ่เคยคิดย่าน
クワーム・プワット・ラーウ・シ・カオ・マー・スーム ボ・クーイ・キット・ヤーン
亀裂が痛みになるかもしれないが 恐れを感じたことはない

**  ในวันนี้เฮาเจอกันแล้ว ยังบ่แคล้วจำต้องจากลา
ナイ・ワンニー・ハオ・ヂュー・ガン・レーウ ヤン・ボ・クレーウ・トン・ヂャーク・ラー
今日この日、2人は出会えた 再会から逃げる事なく

คนที่เฮาตามหา เป็นหยังคือบ่สมใจ
コン・ティー・ハイ・ターム・ハー ペン・ヤン・クー・ボ・ソムヂャイ
探していた人は思い描いていた人とは違ったかもしれない

ให้คองถ่าอีกกี่พันปี ให้อยู่ตรงนี้อีกนานเท่าไหร่
ハイ・コーン・ター・イーク・ギー・パン・ピー ハイ・ユー・トロンニー・イーク・ナーン・タオライ
それでも何千年待ち続ける いつまでもここに居つづける

ขอเพียงแค่ เธอจำฉันได้ชาติไหนก็รอเธอ
コー・ピアン・ケー ター・ヂャム・チャン・ダイ・チャート・ナイ・ゴ・ロー・ター
だから僕の事を覚えていてほしい どんな生命に生まれても僕は待ち続ける


Repeat*

Repeat**


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部分的に意味の分からない所もあるかもしれませんが、ご了承のほどを。

この歌で重要なのは「生まれ変わっても」という点でしょう。

この曲がテーマ曲として使われているドラマ「ナーキー」は、要はヘビの化身の女性とのラブストーリーなので、生まれ変わっても、彼女がどんな姿をしていても、愛は変わらないという事を伝える内容になっています。

しかし、この歌で最も素晴らしい点は、やはりゴンのメロディーメーカーとしてのセンスと才能です。

どんなに歌詞が素晴らしくても、メロディーが良くなければこれだけ多くの人の心を捉える事は出来なかったでしょう。


それに、前作が特大ヒットだったにも関わらず、次の曲がそれをさらに超える人気を獲得するなんて事は、そうそう出来る事ではありません。

そんな点からも、この曲はタイ音楽の歴史に残る名曲になったと思います。


2016年11月22日火曜日

【モーラム万華鏡#4】プラトム・バントゥンシンが「モーラム楽団No.1」と言われる理由

◆ประถมบันเทิงศิลป์(プラトム・バントゥンシン)@ตลาดษมาภร(タラート・サマーポン)19 พ.ย. 2559(2016年11月19日)


ようやくこの日がやって来ました!プラトム・バントゥンシン@バンコク(正確にはサムットプラーカーンですけど)。

7月に何の予備知識も無いまま観に行ったクロンタン市場でのコンサートは、自分がモーラム楽団をもっと観たいと思うようになった、一つのきっかけとなったコンサートでした。

しかし、その時はいわゆる「ミニ」ヴァージョンで、雨期の間のアルバイト的コンサートだったので、乾期に入っての完全版ステージを観られるこの日を楽しみにしていました。









หมอลำหมายเลขหนึ่ง(モーラム楽団No.1)

これは、ある人がSNSにプラトムの投稿した際に使っていたキャプションです。その意味するところはミニヴァージョンを観ただけでも充分感じられました。

しかし、やはり完全版を体験しないと、本当に彼らの魅力が分かったとは言えません。そんな事もあって、かなり意気込んで行った11月19日のタラート・サマーポンでのコンサートだったのですが・・・。

結果から言うと、またもや完全版はお預けとなってしまいました。

というのは、すっかり雨季も明けて、雨の心配をする必要など微塵もないと思ってたにも関わらず、会場に到着した途端土砂降りという、逆の意味での強運具合w

雨が上がるのを待ってコンサートは実施してくれたものの、スタートが22時半とかなり遅くなってしまいました。

バンコクでのコンサートはそれほど遅くまで出来ないので、そうなると時間を短縮せざるを得なく、やはり100%のプラトムを観る事は叶いませんでした。









それでも、プラトムの魅力は充分感じる事が出来ました。

なぜ、彼らが「モーラム楽団No.1」と呼ばれるのか・・・。それは、無条件に楽しいという事です。

個性豊かな歌手が揃っているとか、ステージの完成度が高いとか、色々理由は見つかるのですが、そう行った事よりもまず、ステージを観て楽しくなければ何の意味もありません。

その点でプラトムは、何も知らなくても観ているだけで自然と体が動いてしまう、そこに彼らの最大の魅力があります。

さらに、密度の濃さ。そこがプラトムがNo.1と言われる大きな理由ではないかな、と。

とにかく、歌手・ダンサー・タロック(お笑い)・バンドの演奏、すべての粒が揃っています。何時どこを切り取っても面白い、そんな楽団はなかなかありません。

そして、それらすべてを活かしているステージ作り。人気が集まるのも当然です。





◆エーン・オラディー(แอน อรดี)







凄かったのはエーン・オラディーの人気です。

映画「プー・バオ・タイ・バーン2」にも出演していたエーンですが、その映画の影響でしょうか。彼女がステージに上がっている最中は、ひっきりなしにファンに捕まっていて、ほとんど立って歌っている姿を見ることが出来ないほどでした。

他の日の映像や写真を見てみても、やはり自分が行ったこの日は簡略版の仕様だったようです。

しかし、次につながる発見もありましたし、この日は写真を撮るのに夢中になってしまい、動画を全く撮れなかったので、その意味も含めて次回また彼らがバンコクに来たときにリベンジです。

次にプラトムがバンコクに来るのは、今のところ12月上旬の予定です。