2016年11月16日水曜日

【モーラム万華鏡#3】カムプン・ルアムミット@サムローン(2016年11月14日)

◆คำผุนร่วมมิตร(カムプン・ルアムミット)

ようやく1ヶ月の自粛期間が終わり、タイ各地でコンサートが再開されました。

その再開日となった11月14日は、沢山の歌手・楽団が一斉にいろんな場所でコンサートを行うという、嬉しい事ではありますが、ちょっと困った状況になりました。

しかし、自分は当初から行くコンサートは決まっていました。

そのコンサートはモーラム楽団のカムプン・ルアムミット。

実はちょうど1ヶ月前の10月14日に彼らがバンコクでコンサートを行う予定があり、行くつもりだったのですが、残念ながら流れてしまいましたので、この日を楽しみにしていたのです。





カムプンに関しては名前は以前から知っていたのもの、生のステージを観るのはこの日が初めて。

なので、あまり詳しい事は知らないのですが、分かっているのは拠点はコンケーンで、楽団員数は300名ほどだそうです。

コンサート数は多いほうですので、世間的にも良く知られていると思いますが、実際にコンサートを観て感じたのは、まだこれからの楽団だろうという事です。

今回はまだプミポン国王崩御から1ヶ月しか経っていないので、歌や演奏も若干抑え気味の感じで、いつもの彼らのステージとは違っている可能性もあります。

ですので、即座に判断は出来ないのですが、歌手やダンサー、タロック(お笑い)などのクオリティーを総合的に見ても、他のトップクラスの楽団と比べたら今1歩の感じは否めませんでした。













トップクラスのモーラム楽団は、まず個性的な歌手が揃っていますし、舞台全体のクオリティーやダンサーのテクニックなど、どれをとっても申し分の無いレベルになっていますが、カムプンの場合は楽団を牽引するような目を引く歌手が少なく、ダンサーの質もルックスを含めてまだこれからという感じでした。

カムプンは女性歌手より男性歌手の方が充実していて、お客の反応を見ても人気は男性歌手の方が高かったような印象でした。

トップクラスのモーラム楽団はその辺のバランスが上手く取れていて、男性女性共に個性的で実力のある歌手が揃っているものなので、そういった点でもカムプンはもう少し時間が経ってみないとちゃんとした判断は出来ない、というのが正直な感想です。













◆カムプン・ルアムミット@ワット・ダーンサムローン通り中間-1(2016年11月14日)



◆カムプン・ルアムミット@ワット・ダーンサムローン通り中間-2(2016年11月14日)



◆カムプン・ルアムミット@ワット・ダーンサムローン通り中間-3(2016年11月14日)



何はともあれ、自粛ムードは漂っていたものの、こうしてコンサートが再開されたことは喜ばしい事です。

お客さんも結構入っていましたし、最初はなかなか舞台前に来て踊ろうとはしなかったものの、終盤はかなり盛り上がっていました。

カムプンに関しては、これで彼らの魅力が完全に理解できたとは言えませんので、また機会がありましたら観に行ってみようと思っています。

そして、この後も続々とモーラム楽団がバンコクにやってきます。

出来るだけ多くの楽団をフォローして、まだ日本には全く伝わっていないこのジャンルの謎を紐解いていきたいと思います。

2016年11月12日土曜日

【プミポン国王に捧げる歌#2】ラムローンによるプミポン国王葬送曲集10選

◆沢山出版されているプミポン国王の本の内の2冊。バンコクポスト(左)とサヤーム・ダーラー出版のもの。


2週間ほど前にも同じテーマで投稿しましたプミポン国王を偲ぶ歌ですが、その後も続々公開され、とても全部を拾いきれないほどの数になっています。

ですので、せめてもう1回はまとめておかなければという状況になってきましたのですが、しつこいようですが、今回もプミポン国王に捧げる歌特集です。

ただ、漠然と色んな歌手の歌を取り上げても脳が無いので、このブログらしくモーラムに絞って選びました。

ここで取り上げるイサーンの歌手達が歌っているのはラムローン(ลำล่อง)というモーラムのスタイルの一つです。

このラムローンは基本的にケーン1本のみをバックに歌われる、伝統的なモーラムのスタイルです。

モーラムと一言に言っても様々なスタイルがありまして、その中にラムグローン(ลำกลอง)という、こちらもケーンと歌のみの伝統的スタイルもあるのですが、そのラムグローンとラムローンが具体的にどう違うのかまでは、残念ながら追い込めませんでした。その辺は追々明確にしていきたいと思います。

まず1曲目はイサーンの音楽的遺産としても認定されている、ブンチュワン・デンドゥアン師です。

チャウィーワン・ダムヌーンなどとも同じ世代の方だと思いますが、ハリのある声が素晴らしい、迫力のあるラムローンです。


1.ブンチュワン・デンドゥアン/ラムローン:サデーン・クワーム・アーライ



続きまして、こちらもモーラム歌手としては伝説的存在のアンカナーン・クンチャイによるラムローンです。先日、日本にも行って歌っていたので、彼女の名前を知っている方は多いのではないでしょうか。

そのアンカナーンによるラムローンは2曲公開されていますが、これが凄い!なんと咽び泣きまで歌に取り入れています。

先の当ブログでの特集で取り上げたチャウィーワン・ダムヌーンの曲では、涙を堪えきれなくなったチャウィーワンはマイクから外れていましたが、それを歌の1部にしてしまっているのは、沢山あるプミポン国王追悼曲の中では、このアンカナーン1人だけではないでしょうか。


2.アンカナーン・クンチャイ/ラムローン:アーライ・ポールアン Part1



3.アンカナーン・クンチャイ/ラムローン:アーライ・ポールアン Part2



次の曲はモーラム歌手3人による歌ですが、この3人に関しては知識不足で詳しい事は分かりません。

しかし、文句なく素晴らしいモーラムで、改めてイサーン音楽の奥深さ・素晴らしさを感じさせてくれます。

歌っているのはガルッサナー・ブンセーン(真ん中)、チンゴン・ブンセーン(向かって右)、ヂャムノン・ラーチャー(向かって左)です。


4.ガルッサナー・ブンセーン、チンゴン・ブンセーン、ヂャムノン・ラーチャー/ラムローン:アーライ・ポールアン



次の歌手は改めて説明するまでもないでしょう。R-Siamのメーン・マニーワンです。

彼はR-Siamからの1stアルバムでも、このラムローンスタイルの曲を入れていました。

ヒット曲はポップなスタイルですが、伝統的なモーラムにこそ彼のルーツがあると言っても過言ではないでしょう。


5.メーン・マニーワン/シアン・ニー・ヂャーク・トゥリー・プラバート(国王の足跡から届いたこの声)



続いての歌手は当ブログ初登場、ラムシン歌手のヂャールワン・シアンラカントーンです。

彼女については、自分は1年前にライブDVDを買ってそれを楽しんでいたのですが、残念ながら生のステージはまだ観た事がありません。全くと言っていいほどバンコクには来ない人なので(拠点はマハーサーラカームのようです)。

そのDVDを観ていた時から思っていたのですが、やはり彼女はかなり実力の持ち主です。線は細いながらも存在感のある歌は素晴らしいの一言です。


6.ヂャールワン・シアンラカントーン/ラムローン:サデーン・クワーム・アーライ・ナイルアン



次の歌手も当ブログ初登場の人なのですが、彼女に関しては自分もこのプミポン国王の関連の歌を探している時に見つけた1人です。

名前はクリーム・スダーラット。彼女はまだ学生のようなので、歌手としての活動はどれくらいしているか分かりませんが、オリジナル曲も作られていて、これがまた素晴らしいのです。

しかも、若いのにこのラムローンという伝統スタイルも歌いこなせるなんて、おじさんの心を鷲掴みです。


7.クリーム・スダーラット/ラムローン:ホン・ハイ・アーライ・ポー



こちらも注目の若手の1人と言えます、ウィアン・ノルモンによるプミポン国王を偲ぶラムローンです。

ウィアンは既にGrammy Goldとも契約しているので、近いうちにグラミーからも曲がリリースされるのではないでしょうか。

独特の色気のある、やわらかい声が特徴の彼女。モーラムの素養もしっかりあるようで、将来が楽しみな歌手の1人です。


8.ウィアン・ノルモン/タワーイ・アーライ・ポールアン



続いては、モーラム楽団「ヌーパーン・ウィセートシン(หนูภารวิเศษศิลป์)」所属の歌手、プレーワー・ガーラシンのラムローンです。

こちらも恥ずかしながら今回初めて知った人なので、詳しい事は分かりませんが、舞台で鍛え上げられたと思われる声が素晴らしいですね。

ヌーパーン・・・、バンコクに来たら絶対観に行きたいと思います。


9.プレーワー・ガーラシン/ラムローン:トンファー・イェン・サルア・サオ、アーライ・ポールアン・ラッチャガーン・ティー9・コーン・ペンディン



最後に、こちらも今回のテーマ関連曲を探している中で見つけた人で、凄く気に入った歌手の1人です。名前はチャラートノーイ・ソンスーム先生。

と、そんな言い方はとんでもなく失礼な、なんとチャウィーワンやケーン・ダーラオと同じ、人間国宝の方です。

実はシリポーンのアルバムにも参加した事のある人なので、自分は既に知っていなければならない存在なのですが、今頃になってこの人の凄さにようやく気が付いた、と言う訳です。

さすがの人間国宝、非の打ち所がないモーラムです。


10.チャラートノーイ・ソンスーム/ラムローン・ヤーオ:ペンディン・ホン・ハイ、アーライ・ポー・ルアン



たぶん、この後もどんどんプミポン国王追悼曲は作られるでしょう。

タイ人にとっては、プミポン国王という存在はそれほどまでに大切な存在だったという事の証拠です。

肉体は消えても、歌という形で、プミポン国王はタイの人々の心の中に永遠に生き続けていくでしょう。

2016年11月9日水曜日

【ディスク・ライブラリー#12】シアンイサーンのCool&Beautyが織り成す、ポップでダンサブルなルークトゥン・ワールド

【Artist】ท็อฟฟี่-เบลล์

【Title】เต้นเน้น ๆ

【Release Date】ต.ค. 2557



1.รวมพลคนอกหัก (ท็อฟฟี่-เบลล์)
2.รักเธอทุกชาติไป (ท็อฟฟี่-เบลล์)
3.เต้นเน้น ๆ (ท็อฟฟี่)
4.ดึ๊งดึ่ง (เบลล์)
5.ฟิตเจอริ่ง (ท็อฟฟี่)
6.ขอให้เลิกเจ้าชู้ (เบลล์)
7.เธอใช้ผู้ชายเปลืองไปหรือเปล่า (ท็อฟฟี่)
8.ความหลายใจฆ่าไม่ตาย (เบลล์)
9.เข้าใจตรงกันนะ (ท็อฟฟี่)
10.ขอคนปลดโสด (เบลล์)


リリースされてからだいぶ時間が経ってしまったのですが、今でも度々聴き返している大好きなアルバムですので、紹介したいと思います。

トッフィーとベルは、タイ最大の楽団「シアンイサーン」の若手の中心的存在の2人です。

そんな2人が組んだ初めてのアルバムは、全編に渡ってクオリティーの高い充実した作品になりました。

どちらかと言うとポップスよりなので、エキゾティックな要素は少ないですが、曲作りだけでなくアレンジも含めた1曲1曲の完成度が高く、なおかつトッフィーとベルの歌も素晴らしい、まさに傑作と呼べる1枚です。




と、偉そうな事を言っていますが、自分がこのアルバムの良さに気が付いたのは結構遅かったです。

2015年4月にバンコクでシアンイサーンのコンサートを観た時のリポートを書こうと、色々調べ物をしている時に、Tr.1「ルアム・ポン・コン・オック・ハック(集まれ!ハートブレイカー)」のMVを観て、一発で好きになりました。

でも、本当はその4月のコンサートでその歌を聴いていたはずなのですが、イマイチ記憶に無く、MVを観て、ようやく曲の良さに気が付くという鈍感ぶり。

しかし、ダンサブルな曲調とサビのキャッチーさは、いつ聴いても最高です。


◆รวมพลคนอกหัก(ルアム・ポン・コン・オック・ハック)



続く2曲目もトッフィーとベルのデュエット曲「ラック・ター・トゥック・チャート・パイ(生まれ変わっても君が好き)」。

こちらもTr.1と同様ダンサブルな曲ですが、よりメロディックで2人の高い歌唱力も垣間見える曲です。

作詞・作曲・アレンジはJa R-Siamの曲も担当しているK-NoName先生。


◆รักเธอทุกชาติไป(ラック・ター・トゥック・チャート・パイ)



この後はトッフィーとベルのソロ曲が交互に並ぶ構成になっています。

ソロでもそれぞれデュエット曲に負けず劣らずの充実ぶりになっていて、それはやはり2人の歌手としての実力がとても高いものだという事の証明だと思います。

特にベルはシアンイサーンでも、それほどガンガン前に出てくるタイプではなかったので、このアルバムを聴くまではそれほど自分にとっては意識していた存在ではなかったのですが、このアルバムを聴いて大ファンになりましたね。

2015年11月には再びシアンイサーンのコンサートを観る機会があったので、その時ベルちゃんにはしっかりとCDにサインをしてもらいました。


◆2015年11月14日、南サムローン市場にて


◆เต้นเน้น ๆ(テン・ネン・ネーン)



◆ดึ๊งดึ่ง(ドゥン・ドゥン)



アルバムの8割はアップテンポの曲で占められているのですが、バラード系もいける2人です。

Tr.7「ター・チャイ・プーチャイ・プルーン・パイ・ルプラオ」(トッフィー)、Tr.8「クワーム・ラーイヂャイ、カー・マイ・ターイ」(ベル)の2曲は、他の曲とは違う、もう一つの2人の魅力が出ている曲になっています。


◆เธอใช้ผู้ชายเปลืองไปหรือเปล่า(ター・チャイ・プーチャイ・プルーン・パイ・ルプラオ)



◆ความหลายใจฆ่าไม่ตาย(クワーム・ラーイヂャイ、カー・マイ・ターイ)



と、色々御託を並べてみましたが、そんな余計な事は全く必要ない、無条件に楽しい、最高のアルバムです。

気が付いたら1年も観ていないシアンイサーン。

本当だったら10月にマハーサーラカームでシアンイサーンのステージを観る予定を立てていたのですが、残念ながらそれは無くなってしまったので、11月以降バンコクで観られるのを楽しみにしています。

久しぶりにベルちゃんに会いたいのはもちろん、トッフィーにはCDにサインをもらっていないので、今度こそミッションを達成したいと思いますね。

2016年11月7日月曜日

【Requiem for King Rama 9】モーラム歌手・楽団員3000人によるプミポン国王の葬送舞台

◆コンケーンの200年公園に集まったモーラム楽団員の人達(Pic by November25)


悲報から約1ヶ月。

プミポン国王という魂を失った傷がまだ癒えきらない、微笑みの国タイ。

喪に服するという意味で、1ヶ月間歌う事が出来なくなってしまったタイの歌手達ですが、大切な父がこの世を去ってしまった事でショックを受けているのは歌手達も同じです。

そんな歌手達の、主にモーラム歌手・楽団員が集まって、プミポン国王に最後の別れをする舞台が11月4日、コーンケーンの200年公園で行われました。

当日は場所的な事もあって、残念ながら自分は参加出来なかったのですが、タイにおける大切な歴史的行事ですので、時代のドキュメントとして記事を残しておきたいと思いました。

この日はイサーンの20の県から3000人の歌手・楽団員が集まり、プミポン国王へ別れを告げる壮大な舞台が開催されました。

顔を見せた歌手はチャウィーワン・ダムヌーン、チャラートノーイ・ソンスーム、バーンイェン・ラーケーン、ラートリー・シーウィライ、ノックノーイ・ウライポン(シアンイサーン)、アンナカーン・クンチャイ、ソムヂット・ボートーンなどの錚々たる面々。

モーラム楽団ではプラトム・バントゥンシン、ラッタナシン・インタータイラート、ラビアップ・ワータシン、シラピンプータイ、モーラムヂャイ・トゥンローイ、など。

たぶん、自分も知らない歌手・楽団も多数来ていたはずです。

また、舞台に上がらなかった歌手も多数、会場に足を運んでいた事はSNSの投稿で確認しています。

今後、これだけのメンツが一同に会する機会というのは99%無いはずです。それだけ凄い機会でした。

当日はSNSでもライブ中継されていたので一部を観ていましたが、当然普段のモーラムコンサートのような華やかさは無く(そういう事をしてはいけないと言われているので当然なのですが)、多くの人が黒い服を身にまとい、会場全体が思い空気に包まれていたようです。

王宮前広場をはじめ、タイ各地でこのようなプミポン国王を偲ぶ集いが行われていますが、それらとはまた違う、タイの音楽の歴史においても重要な日になったと思います。

この日の写真を自分で撮れなかったのは残念ですが、Facebookでつながっている人が素晴らしい写真をアップしてくれていたので、許可をもらってこのブログに使わせていただくことにしました。


◆All Pictures by November25




◆バーンイェン・ラーケーン、アンカナーン・クンチャイ、ノックノーイ・ウライポンなどの錚々たる面々が顔をそろえているという事に、国王を亡くした悲しみがヒシヒシと伝わってくるようです。



◆チャウィーワン・ダムヌーン(写真左)、バーンイェン、キャンディーの親子


◆ノックノーイ・ウライポン(写真左)、エーン・オラディー(プラトム・バントゥンシン)、ノーンペン・ナッティダー(シアンイサーン)








◆8chのニュース映像



◆TNNのニュース映像



◆チャウィーワン・ダムヌーン/国王を偲ぶラム・グローン



◆チャラートノーイ・ソンスーム、ラートリー・シーウィライ/国王を偲ぶラム・ローン



◆プラトム・バントゥンシン



政府からは11月14日以降、コンサートなどの催しを行ってよいという許可は出ましたが、まだ当面はプミポン国王を亡くした影響は続きそうです。

2016年11月4日金曜日

【ディスク・ライブラリー#11】世界が注目!楽園バンコクから届いた最先端サウンド第2章

【Artist】The Paradise Bangkok Molam International Band

【Title】PLANET LAM

【Release Date】21 Oct. 2016



このブログでもリリース情報をお伝えした、Paradise Bangkok Molam International Band(以下モーラム・インター)の全世界待望の2ndアルバムがついにリリースされました。

本当は発売日10月21日に合わせてリリースパーティーを行う予定でしたが、プミポン国王の崩御というタイにとってはとても大きな事がありましたので、そのパーティーは来年(2017年)2月に延期になりました。

そのライブのチケットはアルバムと合わせての購入となっていたので(CD付きの場合は500バーツ)、アルバムもそれまでお預けなのかと思っていましたが、さすがにそれでは長すぎるので、アルバムだけ先に発売という形に変更したようです。

前作「21st Century Molam」がリリースされたのが2014年11月でしたから、ちょうど2年ぶりとなる今回の新作。

タイトルが「Planet Lam」という超カッコいいタイトルに、中身にもいやが上にも期待が高まります。




前作からの変化といえば、これまでプロデューサーとして演奏には直接関わっていなかったMaft Saiが、新作からはパーカッションとしてメンバーの一員に加わったことです。

ライブでは既に演奏に加わっていたMaft Saiですが、DJとしてはプロでも演奏はどうなんだろう、と正直半信半疑でしたが、これがどうして、結構上手いのにはビックリしました。

それ以外にサウンド的には前作から大きな変化はありませんが、ドラムマシーンを導入している曲もあったりして、若干の変化は見られます。

ただ、最初に通しで聴いた時の感想は「結構、地味」でした。

アップテンポの曲が少ないのと、1stアルバムのようなキャッチーな曲が少ないのが、そう感じた原因です。

ただ、まだ購入して2日しか経っていないので、繰り返し聴いているうちにまた印象も変わってくるかもしれません。

それでは、それぞれの収録曲に触れていきたいと思います。

1.Lai Wua(Chasing The Cow)

サワイ・ゲーウソムバット先生のケーンのソロから始まる、この2ndアルバム。

1stではカムマオ先生のピンのソロから始まっていたので、今回はこのバンドのもう1人のキーパーソンをフューチャーしてのスタートという意味なのでしょう。

ほとんどの曲で縁の下の力持ち的立場のサワイ先生のケーンの音が存分に楽しめる曲です。

2.India Chia Muay(Thai Boxing Re-fix)

1stアルバムに収録されていた曲「Zerng India Prayuk」のリメイク・ヴァージョン。

メンバーがこの曲を特に気に入っていたのか、はたまた前作の出来にイマイチ不満だったのかは分かりませんが、2ndアルバムにまた改めて収録となったようです。

しかし、パーカッションが加えられているのと、リズムのアレンジに一部変化がある以外、全体的には前ヴァージョンと大きく違いはありません。

ただ、演奏的はかなりダイナミックになっているという点から、前作よりもパワーアップされたヴァージョンになっています。

3.Mor Rhythm Mor Khaen

ドラムマシーンをバックに、サワイ先生がケーンを奏でるこの曲。

生楽器の躍動感が身上のこのバンドのサウンドとエレクトロニクス楽器は水と油のようなイメージを抱いてしまうかもしれませんが、実際聴いてみると、これが意外と違和感ありません。

個人的はモーラム・インターはレコーディングでは、もっとエレクトロニクスを導入したほうが面白いと思っているので、今後の彼らの新しい方向性を示唆させる曲になっているのではないでしょうか。

4.Studio Lam Suite(a.Lam Plearn Ern Sao~b.Soi 51~c.Planet Lam)

11分に及ぶモーラム組曲。

最初はカムマオ先生のピンのソロが約6分間あり、その後シンセ・パーカッション・ドラム・ベースでのインプロビゼーションによるアルバム・タイトル曲へとつながる構成になっています。

全体がゆったりしたリズムのアンビエントっぽい曲なので、若干取っ付きにくいですが、繰り返し聴くとじわじわと味が出てくる、モーラム・インターの新しい側面が感じられる曲です。

5.The Adventures of Sinsai

ライブでは既に重要なレパートリーになっている、アップテンポのダンサブルな曲。

ライブ演奏のようなダイナミックさを上手く封じこめてはいるものの、ドラムスがちょっと勢いまかせになってしまっているのが残念。

レコーディングなので、フレーズはしっかり決めた上で録音をしてほしかった。ライブならこれでも良いかもしれませんが、録音物としては雑に感じてしまいます。

個人的に大好きな曲なので、もうちょっと丁寧に作ってほしかったです。

6.Namtok(Waterfall)

こちらの曲もライブでは既におなじみの曲。

スローテンポのアンビエント・テイストの曲です。この曲もTr.4同様、モーラム・インターの新しい側面を感じさせる曲になっています。

7.Sudsanan

再びサワイ先生のケーンをフューチャーした曲。

今作は前作と比べると全体的に厚みが増しているミキシングになっているのが感じられます。それに比例して、ケーンの音も厚くなっているのが嬉しい所です。

ケーン・ベース・パーカッションのみのシンプルなサウンドなのに、つい引き込まれてしまう、ある種の魔力を感じる曲です。

8.Exit Planet Lam

Tr.4の中の曲のデヴァージョン。

スペーシーなサウンドは、アルバムのタイトル「モーラム惑星」を見事に表現していて、アルバムのラストにふさわしい曲になってます(アナログ盤はこの曲がラスト)。

9.Lam San Ra(2016 Version)(CD Only)

この曲と次のTr.10はCDのみのボーナス・トラックです。

この曲には「2016 Version」と付けられているので、古い曲のリメイクなのかも知れませんが、1stアルバムの収録曲を調べた限りでは同じタイトルの曲は無かったので、レコーディングされるのは初めてなのかもしれません。

カムマオ先生のピンが素晴らしい、皆が好きなモーラム・インター・サウンドの魅力が凝縮された1曲です。

10.Exit Dub(CD Only)

Tr.8のDub Mixです。

Dub処理されたことで、元々スペーシーな曲がさらにスペーシーになっています。

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と、一通り収録曲を聴いた所で思ったのですが、このアルバムは「モーラム惑星」と名づけられているように、コンセプトは「宇宙規模のモーラム・サウンド」という事なのかも知れません。

そう考えると、全体的にスペーシーな印象を感じるのにも納得できます。

まだ、リリースされてから間もないので、アルバムのサンプラー的ものはありませんが、9月に公開されたBoiler Roomでのスタジオライブでは、新作から4曲が演奏されているので、参考までにその動画を貼っておきます。

【Live at Boiler Room Playlist】
1.Namtok(*)
2.Lai Wua(*)
3.The Adventures of Sinsai(*)
4.Sudsanan(*)
5.Lam San Disco
6.Roob Lor Pu Tai
7.Show Wong Molam International
(*)2nd Album Planet Lam収録曲

◆The Paradise Bangkok Molam International Band Live at Boiler Room In Stereo



◆The Paradise Bangkok Molam International Band/Exit Planet Lam+Dub Mix(Worldwide Premire)


日に日に世界的注目度が増しているモーラム・インター。

2016年も2度のワールドツアーを成功させていますが、先進国でまだ訪れていないのは日本だけだと思います。

この新作も近いうちに日本でリリースされるはずですので、それを機に日本でのライブをぜひ実現させてほしいものです。

2016年11月2日水曜日

【ディスク・ライブラリー#10】ルークトゥン・モーラムの水準を引き上げたペット・サハラットの傑作アルバム

【Artist】เพขร สหรัตน์(ペット・サハラット)

【Title】๙ สิงหา ผู้บ่าวดาวเทียม(9 シンハー、プー・バウ・ダーオ・ティアム)

【Release Date】ธ.ค. 2558(2015年12月)



1.ผู้บ่าวดาวเทียม
2.แช่งใส่ซอง
3.บักขี้เหล้า
4.แสลงใจ(ร้องคู่ เนย วรัญญา)
5.ก้อนคำ
6.เรืองเศร้าเช้านี้
7.แคร์เขาเจ้ากะไป
8.อยู่กับเขาอย่าเอาแต่ใจ
9.บักจัณฑาล
10.มนต์ฮักสาวลาว


今はタイに住んで、ルークトゥン・モーラムのコンサートをメインに、日々タイ音楽に接していますが、ことCDなどのパッケージものにおいては、繰り返し聴いているものは少ないです。

それは、タイではルークトゥン・モーラムだけでなく、ポップス・ロックを含めて、アルバムを一つのストーリー性のある作品として意識して作られているものがほとんど無いからです。

単純に曲を詰め込んでいるだけで、オープニングからラストまでの流れや、前後の曲との関係などを考えて配置しているアルバムにはほとんどお目にかかったことがありません。

しかし、その認識を覆してくれたのが、このペット・サハラットのアルバムです。

疾走感のあるオープニングから感動的なラストの曲まで、全体的な流れも意識されていますし、曲順やアレンジのヴァリエーションなどにも気を配っていて、一つの作品として、これまで自分が聴いた事のあるタイのアルバムとしては突出した完成度の高さを誇っています。




実は自分は、今までペット・サハラットはイマイチ苦手でした。

歌手としてだけでなく、数々のヒット曲を送り出したクリエーターとして、現在のルークトゥン・モーラム界において重要なキーパーソンとしては充分理解してはいるものの、歌手としてはどうも今ひとつのめり込めませんでした。

その意識を180度変えてくれたのが、Tr.1のアルバムタイトル曲「プー・バウ・ダーオ・ティアム(偽りの星の王子様)」という曲でした。

この最高にカッコイイ曲で、ようやくペットの魅力に気が付く事が出来ました。


◆ผู้บ่าวดาวเทียม(プー・バウ・ダーオ・ティアム)



1曲目でリスナーの意識をつかんだ所での2曲目は、このアルバムのリード曲となった大ヒット曲「チェン・サイ・ソーン(イサーン的発音だとセン・サイ・ソーンに聞こえます)」。

「アーイ・ターイ・シ・ハイ・ナム・ボ」が大ヒットした後もコンスタントに、ヒット曲を出し続けるペット。

今やコンサートには欠かせなくなったこの曲は、「アーイ・ターイ・・・」とは曲調がだいぶ違うものの、媚びることなくタイのリスナーの心をつかむ事に成功しています。

そして、それは彼にはクリエーターとしての才能があるということの証拠だと思います。


◆แช่งใส่ซอง(チェン・サイ・ソーン)



アップテンポの曲が2曲続いた所で、その後はスローの曲2曲でリスナーをクールダウンさせます。

と言っても、Tr.3「バッ・キー・ラオ(酔いどれ野郎)」とTr.4「サレーン・ヂャイ」、共に捨て曲でもなんでもなく、ペットのメロディーメイカーとしてのセンスが光る2曲です。

「サレーン・ヂャイ」でペットとデュエットしているのは、彼の教え子であるヌーイ・ワランヤーです。


◆แสลงใจ(サレーン・ヂャイ)



そしてTr.5「ゴーン・カム」ではレゲエを取り入れたアレンジの曲を配置して、場面転換をしています。

MVもユニークなこの曲。クネクネした踊りをしているのは、ピー・サドゥーの曲「ヌアイ・マイ・クラップ・ピーノーン(เหนื่อยไหมครับพี่น้อง)」のMVでも踊っていた彼です。

ピーの曲よりも、このペットのMVの方がダンサー君の魅力が良く出ているかも。


◆ก้อนคำ(ゴーン・カム)



アナログ盤だとB面の1曲目に当たるTr.6「ルアン・サオ・チャオ・ニー」と、次の曲Tr.7「ケー・カオ・ヂャオ・ガ・パイ」は再びスローの曲ですが、Tr.5で場面転換をしているので、だれることなく聴けます。

ちなみにMVでは、この2曲は続きもののストーリーになっています。

そしてTr.8「ユー・ガップ・カオ・ヤー・アオ・テーヂャイ」では、またもや雰囲気が変わってモーラム・マナーのアレンジの曲です。

7曲目までは何の予備知識も無ければ、ポップス系のアルバムとしても聴けてしまうくらいですが、ここでようやくルークトゥン・モーラム歌手としてのペット・サハラットを聴く事が出来ます。


◆อยู่กับเขาอย่าเอาแต่ใจ(ユー・ガップ・カオ・ヤー・アオ・テーヂャイ)



Tr.9「バック・ヂャンターン(世捨て人)」ではホームレスの悲哀を歌っています。

しかし、決して悲しいばかりではなく、そこはユーモアも交えて、カラッとさわやかに。

そして、このアルバムの白眉ともいえるTr.10「モン・ハック・サーオ・ラオ(魅惑のラオスの女性たち)」で感動のラストです。

ラオスへの愛を歌ったこの曲。

イサーンとラオスとの強いつながりを感じさせる、スケールの大きな曲でこのアルバムは締めくくられています。


◆มนต์ฮักสาวลาว(モン・ハック・サーオ・ラオ)



このアルバムが完成度の高い作品になったのは、ペットの歌手・プロデューサーとしての才能だけでなく、2人のアレンジャー(SAM、テーク・コンサーン)の存在も大きいです。

彼らの尽力なくして、このアルバムは成り立たなかったでしょう。

CDリリース量が減少する一方のタイで、しかもルークトゥン・モーラムのジャンルからこのようなクオリティーの高いアルバムが作られたのは、一言で奇跡とも言える出来事です。

そして、このアルバムが今後ルークトゥン・モーラムには多大な影響を与える事は、想像に難くありません。