◆รัตนศิลป์ อินตาไทยราษฎร์(ラッタナシン・インタータイラート)
雨期が明けそうで、すっきり明けきらない10月初めのタイ。
まだ時々まとまった雨が降ったりするのですが、その割合も徐々に減ってきているので、まもなく乾期に入るかもしれません。
毎年この時期になると、一斉に動き出すのがモーラム・ラムシン楽団。今年も9月の終わり頃から続々と楽団開きが行われています。
彼らの拠点はイサーンなので、まずはイサーン各地を順次回って、その後バンコクに来るというスケジュールの楽団がほとんどなのですが、そんな中、いち早くバンコクにやって来てくれたのがラッタナシン・インタータイラートです。
ラッタナシンは4大モーラム楽団の一つに数えられる、タイを代表するモーラム楽団と言っても過言ではありません(他はプラトム・バントゥンシン、シラピン・プータイ、ラビアップ・ワータシン。人によって違うかも知れませんが)。拠点はコーンケーン。
自分にとっては初めて観たモーラム楽団がこのラッタナシンだったので、そんな意味でも思い入れの深い楽団と言えます。
そのラッタナシンの今期最初のバンコク・ツアーは、10月7日のパッタウィゴン市場を皮切りに、9日のサムローンまで3日間連続で行われました(パタヤも含めると4日間)。
その内、自分は10月9日のワット・ダーン・サムローン通り中間での公演を観に行って来ました。
この日は直前に降った雨で足元がかなり悪かったにも関わらず、会場には大勢の人が詰めかけ、終盤は泥だらけになりながら、皆で踊りまくっていました。
大体、バンコクでのこの手のモーラムコンサートは8時頃から前座的なものが始まり、9時頃からメインステージが始まるのですが、この日はメインの始まるが若干遅く、10時前後から始まりました。
◆ラッタナシン・インタータイラート@グラーンソーイ・ワットダーン・サムローン-1(2016年10月9日)
ラッタナシンの特徴は、と聞かれたら、パッと一言で言えるほど自分もその魅力を理解しきっていないのですが、強いて言えば、モーラム・コンサートの醍醐味が凝縮された至極のステージを見せてくれる楽団、といった感じでしょうか。
この楽団の場合、プラトムのような際立ったキャラクターを持った歌手というのは少ないのですが、250人いるという歌手・ダンサー陣が一丸で築き上げた、美しく壮大なステージは圧巻の一言です。
◆ラッタナシン・インタータイラート@グラーンソーイ・ワットダーン・サムローン-2(2016年10月9日)
また、今回自分が観ていて思ったのは、ラッタナシンは男性演者が充実している楽団だという事です。
結構イケメンの男性陣が揃っていて、ファンもどちらかというと彼らを目当てに来ている人が多いように思いました。
もちろん女性陣にも魅力的な歌手はいます。ただ、あまりガツガツ出てこないタイプの人が多いようですので、その魅力が充分分かるにはもう少し時間がかかりそうですが。
◆ラッタナシン・インタータイラート@グラーンソーイ・ワットダーン・サムローン-3(2016年10月9日)
◆ラッタナシン・インタータイラート@グラーンソーイ・ワットダーン・サムローン-4(2016年10月9日)
それと、フリークがいるのもこの楽団の特徴です。日本では見られなくなったフリークはまだタイではエンタテインメントの重要な要素の一つなのですが、タイでもこういったフリークを取り入れている楽団は少なくなりましたので、そういった意味でもこのラッタナシンは貴重な楽団です。
◆ラッタナシン・インタータイラート@グラーンソーイ・ワットダーン・サムローン-5(2016年10月9日)
日本人がモーラム楽団の良さを理解するのは、名前が知られた歌手がいるわけでもないので、一見難しいものだと思われているかも知れませんが、この手のコンサートを楽しむには理屈なんてものは必要ありません。
必要なのは一つだけ。それは、楽しむ事が出来る「センス」だけです。
中には「モーラムは奥が深いので、あえて入り込まないようにしている」などと間抜けな事を言っている人もいますが、そんな屁理屈は全く持って愚の骨頂です。
入り込んでもいないのに奥が深いなんて事は分かる筈もありませんし、じゃあルークトゥンは奥が深くないのかと言ったら、そんな事はありません。むしろモーラムよりも遥かに奥が深く、幅の広い音楽です。
そもそも、日本人でルークトゥンを余すことなく全て説明出来る人などいません。未だにルークトゥンの重要な要素であるレーとリケーの区別すら明確に説明できないレベルで、ルークトゥンの何が分かっていて、モーラムの方が奥が深いと言っているのでしょうか。
ルークトゥンも全て調べきり、モーラムの歴史やスタイルを全部調べて、比べた結果、モーラムの方が奥が深かったというのなら分かりますが、それすらもせず、漠然と「奥が深そう」と言っているのは、単に自分がモーラムを理解するセンスがない事を遠まわしに言っているだけに過ぎません。
好きだったら、理屈などは二の次で自然と体が動くはずです。言葉も分からないし、モーラムの歴史やスタイルの事など全然知らないけど、楽しくて体が動いてしまうから聴いている。それで充分
です。
はっきり言って、自分も沢山あるモーラム楽団を全部把握しきっている訳ではありませんし、モーラム・コンサートの魅力を理解しきっている訳ではありません。
では、何故モーラムのコンサートを観に行くのか。その理由はただ一つ。「楽しいから」だけです。
日本では今まで全く紹介されていなかったこのジャンルですので(紹介できるセンスを持っている人がいなかったとも言えます)、色々な細かい事を調べるには時間がかかると思います。
しかし、日本にもいる、モーラムを楽しいと思える「良いセンス」を持った、数少ないタイ音楽ファンの為に、少しずつでもその魅力を伝えていければと思っています。
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